クラウド・インフラ 2026.10.23

Grafana Cloud、全スタックにKnowledge Graphを搭載 インフラからユーザー体験までを人間とAIエージェントが同じコンテキストで調査

文・webmaster 約10分
Grafana Cloud、全スタックにKnowledge Graphを搭載 インフラからユーザー体験までを人間とAIエージェントが同じコンテキストで調査

【サンフランシスコ発、2026年10月20日(米国時間)】オープンスタンダードに準拠したAIエージェント型クラウドオブザーバビリティを手がけるGrafana Labsは、「ObservabilityCON 2026」において、すべてのGrafana CloudスタックへのKnowledge Graphの搭載、Grafana Cloud Digital Experience Monitoringへの新機能追加、Grafana Cloud Incident Response Management(IRM)の機能拡張を発表しました。これらにより、インフラとアプリケーションの依存関係を、ユーザーエクスペリエンスや障害対応と結び付けて把握できるようになります。人間とAIエージェントは、共通のコンテキストのもとで問題の調査と対応を進められます。

背景には、AIエージェントを活用するシステムのアーキテクチャが複雑になり、エージェントを使って問題を調査・対応するチームが増えている状況があります。エージェントが「技術的な事象」と「ビジネスへの影響」を結び付けるには、コンテキストが欠かせません。データベースからユーザーのブラウザまでのテレメトリ(メトリクス、ログ、トレースなどの稼働データ)は取得できていても、障害が起きたデータベース、影響を受けるサービス、対応する担当チーム、顧客がどう関係しているかを示す情報が足りないケースが多いといいます。「2026 State of Observability Report」では、調査対象となった300名のITおよびエンジニアリングのリーダーが、最も多い成熟段階(30%)として「予期しないシステム動作を説明できるが、ユーザーに影響が出る前に問題を検知・防止できない」と回答しました。Grafana Cloudはこのギャップを埋めるため、フルスタックオブザーバビリティを継続的に拡張しています。オープンスタンダードを基盤としているため、Grafana独自のエージェントに加え、すでに利用している他のエージェントとも連携できます。

Grafana Labsのプロダクトディレクター、Richard Lam氏は「多くの企業が抱えているのは、モニタリングの問題ではなく、技術的負債の問題です。すべてのレイヤーからテレメトリを取得していても、その影響を受ける顧客と結びつける手段がないのです」と指摘しています。そのうえで、Knowledge Graphをすべてのクラウドスタックに搭載して適用範囲をインフラからユーザーまで広げたことで、統合されたオブザーバビリティを各組織が自ら組み立てるものではなく、人間にとっても、人間と共に働くAIエージェントにとっても統一された基盤にすると述べています。

Knowledge Graphでシステム全体の関係を一元的に把握

Grafana Cloud Knowledge Graphは、システムの構成要素とその関係、稼働状態を結び付け、実行時に参照できるコンテキストを提供する基盤です。インフラ、アプリケーション、ユーザー向けのシグナルを共有モデルでつなぐため、人間とAIエージェントは依存関係を横断して事象の根本原因まで追跡できます。各企業は、AIエージェントが自社環境について把握すべき情報をここで整理・管理します。

Knowledge Graphは、Grafana Cloudのオブザーバビリティソリューションから得られるテレメトリをもとにコンテキストを構築し、AIエージェント、アプリケーション、データベースと、クラウドサービスやKubernetesクラスターとの関係を示します。フロントエンド監視と合成監視(シンセティック監視)を通じて、可視化の範囲はユーザー体験にまで及びます。さらに、カスタムエンティティを使って自社だけが持つ知見を加えられるため、人間とAIエージェントがオープンスタンダードを基盤とした同じコンテキストで作業でき、複雑な問題も推測や行き詰まりを減らして解決できるとしています。Knowledge Graphの新機能は次のとおりです。

  • カスタムエンティティ(Custom entities、GA):テレメトリから定義したエンティティ(サービスやインフラなど、グラフ上で扱う構成要素)とその関係を使い、Grafana Cloudが検出した構成要素を自社の製品などのビジネス上の単位にまとめられます。既存の関連付けの確認やルールの作成は、Grafana AssistantのKnowledge Graphモードが支援します。
  • 担当情報付きサービスカタログ(Service catalog with ownership、プライベートプレビュー):Grafana Cloud Service Centerから、サービスの担当者や担当チームの情報、オンコール当番表、運用手順書(ランブック)をグラフ上に統合します。依存関係をたどりながら、そのサービスに対応できる担当者や担当チームも同時に把握できます。
  • AIエージェント向けの実行時コンテキスト(Runtime context for agents、GA):Grafana Assistantや、gcx経由で接続された任意のAIエージェントが、実行時にKnowledge Graphの情報を参照できます。グラフクエリ言語Cypherによる検索機能が新たに加わり、エージェントは構成要素間の関係を柔軟に取得できます。生のテレメトリから毎回コンテキストを組み立て直す必要がなくなり、構築済みの情報を調査の起点にできます。

データ分析・リスク管理ソリューション企業LexisNexis Risk Solutionsのソフトウェアエンジニアリング/シニアディレクター、Neil Wilson氏は「これからのオペレーションを定義するのは、誰が最も多くのテレメトリを集めるかではなく、誰が最も正確なコンテキストを提供できるかです」とコメントしています。同氏によれば、調査で最も難しいのがデータ不足であることはまれで、課題は複雑なエコシステム全体でサービスの担当者や担当チーム、依存関係、運用知識、顧客への影響を結び付けることにあります。Entity Graph(システム構成要素間の関係を示すグラフ)はそのつながりを可視化し、エンジニアとAIシステムの両方がデータから理解へ、そしてアクションへと移行するために必要なコンテキストを提供すると述べています。

ブラウザとモバイルまで広がるDigital Experience Monitoring

サーバーだけを監視していては、顧客が実際にアプリを操作する場面で起きている問題を見逃してしまいます。Grafana Cloud Digital Experience Monitoringは、フルスタックオブザーバビリティをブラウザとモバイルデバイスまで拡張し、期待される動作を再現するプロアクティブなテストと実際のユーザーから得られるシグナルを、スタック全体と同じテレメトリ上で連携させるものです。今回、システムの健全性とユーザーエクスペリエンスのギャップをさらに縮めるため、新たなユースケース、ユーザージャーニー、データ種別、表示形式に対応する機能がリリースされました。

  • Session Replay(パブリックプレビュー):アプリケーション上のユーザー操作を記録し、動画プレーヤーのような画面で再現します。問題発生時の状況を関連するテレメトリと照合し、何が起きたかを正確に把握できます。
  • Mobile Observability(プライベートプレビュー):アップストリームのネイティブOpenTelemetry SDKを使い、iOS、Android、React Native、Flutterアプリにフロントエンドオブザーバビリティを拡張します。別途ツールを追加することなく、モバイルユーザーの体験をスタック全体の他のテレメトリと同じ基盤上で結び付けられます。
  • Critical User Journeys(プライベートプレビュー):重要なユーザージャーニー(ユーザーが目的を達成するまでの一連の操作)を定義し、各チームがその重要度を共通の基準で判断できるようにします。ジャーニーをエンドツーエンドで探索し、コンバージョン率の低下から根本原因まで1つのビューで追跡できます。

IRMの拡張で人間とAIエージェントが障害対応の状況を共有

フルスタックの可視性が最も問われるのは、すべてのレイヤーが連携して機能しなければならない障害発生時です。ただ実際には、AIの登場によって障害対応はシンプルになるどころか、より複雑になっているといいます。AIエージェントを障害対応に取り入れる組織が増え、エンジニア、コーディングエージェント、Grafana Assistantが同じインシデントを同時に調査するようになると、何が確認済みなのかの共有記録がなければ作業が重複するおそれがあります。Grafana Cloud IRMの機能拡張は、人間とAIエージェントが状況を共有し、同じワークスペースで作業を進められるようにするものです。

  • Grafana Workflows(パブリックプレビュー):Grafana Cloudと他のツールをまたいでアクションを連携させる、イベント駆動型の自動化機能です。分析や文章作成が必要なステップにはGrafana Assistantを活用できます。重大インシデントの初動対応、オンコール当番の引き継ぎレポート、サービスの稼働状況をまとめる週次レポートに対応した、設定済みのワークフローテンプレート(ブループリント)も用意されています。
  • Operational Context with Knowledge Graph(プライベートプレビュー):過去のインシデント対応で試した対処、判明した事実、原因候補から除外した仮説を記録します。次回の調査ではこれらを起点にでき、AIエージェントは過去の仮説を現在の証拠と照らし合わせて検証できます。
  • Response Console(プライベートプレビュー):人間とAIエージェントが障害対応で協力するための統合インターフェイスです。対応者はClaude、Codex、Assistant Investigationsを1か所で利用でき、すべてが同じKnowledge Graphのコンテキストを共有するため、作業の重複や確認済み事項の見落としを防ぎます。

Grafana Labsは、1万社を超える組織が活用するフルマネージド型オブザーバビリティプラットフォーム「Grafana Cloud」を提供しています。オープンソースとオープンスタンダードを基盤に、あらゆるスタックとの相互運用性を考慮して設計されており、AIを活用したオブザーバビリティと、AIシステムを監視するためのオブザーバビリティの両方を提供しています。Anthropic、Bloomberg、NVIDIA、Microsoft、Salesforceをはじめ、多くの企業が同社を利用しています。同社は40カ国以上にチームメンバーを擁するフルリモート企業で、Lightspeed Venture Partners、Sequoia Capital、GIC、Coatue、J.P. Morgan、CapitalG、Lead Edge Capitalをはじめとする主要投資家の支援を受けています。

出典:グラファナラボ日本合同会社

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